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平成29年度入学式式辞(2017年4月5日)

2017年4月5日 

 新入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ご家族・関係者の皆様にもさぞお慶びのこととお祝い申し上げます。また、谷本知事をはじめ大勢のご来賓の皆さまにはお忙しいところご列席賜りましたことを厚く御礼申し上げます。時はまさに春、桜の開花も間近となり、自然にあふれたキャンパスはすっかり春の気配で皆様を歓迎しています。

 さて、皆さんのようなこれから看護職を目指す方々、すでに看護の経験を持ちながら看護の教育研究者やより専門的な実践者を目差す方々はいつの時代でも社会から嘱望されています。それは、看護や看護の発展なしでは人生が滞ってしまう人が大勢おり、その課題は社会の情勢やあり様によって常に変化しているからです。皆さんは望んでこの道を選んだ方々です。その志を忘れることなく、新たな未来に向かってください。4年後、あるいは2年後、3年後に一斉に巣立っていただけるよう教職員一同も、心を新たにして皆様の入学をお待ちしておりました。

 人は生まれた瞬間から出発し、様々な人生を送りつつ、その人生を謳歌するに必要な心身及び社会的な条件を整え続けます。生まれた時代を問わず、そこには必ず健康不安・病気・障害と呼ばれる問題が含まれ、しばしば支援を必要とする状況が生じます。いずれ死ぬとわかっていても人は安心してその時その時を生きていたいのです。日本は大変な高齢社会を迎えています。日本人がこのように長寿となったには、社会経済的な発展や医療の進歩はもちろんですが、伝統的な感染症を国全体で早く克服し、生活習慣病を予防してきた医療や看護の歴史があります。そこには病院で働く看護師に加えて、治すだけでなく、予防にむけて住民の間で働く保健師の姿がありました。長寿社会となり、日本は世界の最先端の位置で人生の幸せを求め、不幸せを避ける道を探っています。日本がどのような高齢社会を作り上げるか、日本で暮らす誰もが幸せと安心を感じる社会となるかは、世界から注目されています。

 これから看護職を目指す皆さん、看護職は人の一番身近なところでその人の身になって気持ちを理解し、その人にあった支援をすることが仕事ですから、地方創生が言われ、地域包括ケアシステムが準備される日本でこれからの看護職となる皆さんの社会に果たす役割はとても大きなものがあります。また、対個人ばかりでなく、地域ごとの文化やその価値観を掴んで予防的な支援方法を考え出す看護職である保健師の存在にも期待がかかっています。看護職を目指して入学した皆さん、皆さんが求めることをたくさん学べることを期待して入学してからの勉強を楽しみにして下さい。

  大学院に入学された皆さん、皆さんの目的は教育者や研究者そして高度実践看護師と様々です。それぞれにかかる期待には同じく大きなものがあります。教育者、研究者を目指す皆さん、教育の面では幅広い見識を身につけた教育者が今後の日本に求められる看護職を育成できること、研究の面では人や看護に関する堅実で実証的な研究が今後の日本に必要な教育や看護実践をもたらすことを考えると、しっかり学び自立して教育方法や看護方法を開拓し、多方面に影響を及ぼしうる人材となっていただきたいと思います。専門看護師を目指して大学院に入学された皆さんには、看護職が専門性を持ち焦点化した分野の一段上の知識や技術をもって他の医療専門職と患者のケアを相談し、リーダーシップを発揮して仲間の看護職を支援するというまさに卓越した人材となるためのたくさんの学びが待っています。欧米に比べて日本ではまだ少ない高度実践看護師ですが、日本において今後ますます求められる人材です。初心貫徹の精神で最後まで学んでいただきたいと思います。

 申し上げてきましたように、ここにおられる皆さんの前にはたくさんの学ぶことが待ち受けています。大学や大学院で学ぶということは知識を得るだけでなく、知識を使いこなし、知識を基に自分の頭で考える力を身につけることです。正解が用意されている問題を解くことが中心であったこれまでとは異なり、今後は正解のない問題にも向かっていかねばなりません。看護で出会う人というものは複雑で難しい存在です。正解となる手本はなく、しっかりと考えて人の信頼を得ることがまず第一歩です。そのためには時間的、心理的の両面から考えるゆとりのある生活を心がけ、自分の中に眠っている考える力を引っ張り出す必要があります。本学が立地するかほく市は、考えること、思索にとって適している地と言えます。世界的な哲学者である西田幾多郎先生を輩出した地であり、すぐ近くに記念館があります。是非立ち寄ってみて下さい。

 皆さんは受験勉強の経験をお持ちですから、時間の捻出の工夫はご存知と思います。今後はそれも引き続き大事です。加えてもうひとつ、心理的なゆとりの捻出という課題があります。年齢とともに時の流れが早く感じられるようになるそうです。皆さんもすでに小学校の頃の夏休みを思い浮かべると、それに比べて現在は時間の進みが早いと感じておられるのではないでしょうか。時間が早く過ぎ忙しいという心理に陥ることは、じっくり考えることを放棄する恐れがあります。これでは考える力は育ちません。

 時間感覚について、脳科学者によれば、「周りの世界が見慣れたものになってくると脳が取り込む情報が少なくてすみ、時間が早く過ぎ去っていくように感じる」のだそうです。それに対して時間感覚を遅くするには、「脳が理解するのに時間を要するような新しい刺激を与えること」とのことです。すなわち、新しい刺激が少ないと時間が早く過ぎるように感じ、新しい刺激が多いと逆に感じるというのです。時間が早く過ぎ去ってゆくと感じることは、忙しいという心理につながりますから、気持ちの上で忙しくて余裕がない場合には、かえって積極的に新しいことにチャレンジする方が充実した時を過ごせるということを覚えておいて下さい。そしてこのことはここで勉強する上で皆さんにとって必要なことなのです。

 脳科学者による脳に新しい刺激を与えるための5つの提案があります。1つ目は「学び続けること」、2つ目は「新しい場所を訪ねること」、3つ目は「新しい人に会うこと」、4つ目は「新しいことをはじめてみること」、5つ目は「自発的になること」です。一言で言うと、学ぶことを続け、新しい場所や、人、ことに触れ、自発的になることです。皆さんは新たに学ぶためにこの大学に入学するのですからどれもすぐできそうですね。大学には素材となるプログラム、これには授業や実習もあれば地域に出かけるプログラムや海外研修もあり、友人や教職員など素材となる環境は十分整っています。しばらくはとてもいい刺激を受けることと思います。しかし受け身ではいつの間にか慣れてしまい、脳への刺激は弱まります。ですからもっとも肝心なのは五つ目の自発性だと思います。学び続ける、新た刺激を受け続ける、これは自らの姿勢によります。何事も鵜呑みにしないで疑ってみる、比べてみる、叩いたり押したりしてみるなど自分に課してみて下さい。止むことなく考え続け、気がついたら考える力が身についたと実感できると思います。

 本学はまだ18年目の若い大学ですが、開学時から比べて日本全体の時代が動き、石川県下の社会経済的な状況が変化し、看護教育のあり方も、考え、工夫せねばならない節目です。大変ですが、その分、大学内は活気があると感じています。皆さんと同じく、大学も漫然としておられず、積極的に新しいことを受け入れ、立ち向かい、考え、他に先駆けて改革する自発的な意図を高く掲げていると思います。

 そのような大学に皆さんは入学します。ともに活気のある時を刻めるように高めあってゆきましょう。教職員一同、皆さんがこの大学に入学してよかったと思っていただけるよう、本日から皆さんとともに歩むことを誓って式辞といたします。

学長 石垣 和子

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