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平成24年度卒業式式辞(2013年3月16日)
2013年3月16日
卒業生、修了生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。
ご参列のご家族、関係者の方々へも心からお祝いを申し上げます。
また、お忙しい中を駆けつけてくださいました谷本石川県知事をはじめご来賓の皆様、石川県公立大学法人の皆様には、厚くお礼を申し上げます。
ただ今93名の卒業生の皆さん、13名の修了生の皆さんに未来への橋渡しとなる学位記をお渡しできて、大役を果たした思いです。
皆さんはこれから新人看護職として、修士の学位を得た優秀な人材として、社会にこぎ出します。ここに集まった人々が、皆様の出発を祝福とともに見守っておられます。自信を持って堂々と役割を果たしていただきたいと思います。
さて、数日前に2年前の東日本大震災からの復興が未だにかなわない状況にあることが改めて報道されたばかりです。暗い気持ちになり、歯がゆさを覚えた人も少なからず居られたのではないでしょうか。
そのような日本において、本日皆さんの卒業式に臨むにあたり、例年以上に一人一人の元気な出発、そして社会での頑張りを願ってやみません。どんな時でも小さな子供の存在が万人の笑顔を誘うように、皆さんの活躍もここに集まった一同の気持ちを明るくさせます。若い皆さんが日本の未来を創る、フレッシュな皆さんが世界をつなぐと信じて希望を託したいと思います。
皆さんにかかる期待には大きなものがありますが、一人ひとりは自分の心に確かめながら、無理をせず進むことが大切です。それらが合算されたとき、大きな力になります。ひとりで全部は背負えません。
人にはそれぞれ自分というものがあり、資格を身につけようが、優秀な人材と言われようが、自分は以前の自分です。私は、この年になって自分自身にも、青春時代に知り合った友人にも、何十年経っても本質はあまり変わらないと気づくようになり不思議に思うと同時に、人には抗えない“その人らしさ”がいつの間にか、しかも人生の早いうちに備わるものだと考えるようになりました。人は、“らしさ”をもって他人には知られているのではないでしょうか。ところが若いときには本人がもっとも自分を知らず、その人らしからぬ動きをしてしまうものなのではないでしょうか。そのような時はあまり居心地がよくないはずです。
皆さんには、時々は長いスパンでの自分を見つめ、自分が何者であるかを知り、その時々の自分が自分なりに居心地よく存在しているか客観的に振り返ることをお勧めしたいと思います。その時々が、思い描いた自分の理想の姿でなくても、究極の自分らしい自分にはあらがえないものであると考えることによって達観できます。冬の桜の木を見てそのうち花が咲き、さくらんぼがなることを誰もが疑わないように、皆さんも“らしさ”が備わり、いつかそれを発揮すると信じてもらえるようでいてほしいと思います。
この秋の学園祭のテーマはyou canでした。とてもいいテーマです。皆さんにも困難を乗り越え、少し上を見て挑戦することは是非お願いしたいと思います。それと同時にそれができる自分を知り、保っていただきたいと思います。
ところで、彼を知り、己を知れば百戦あやうからずという孫子に書かれた言葉があります。これによれば自分を知るに加えて、もう一つ、彼を知るということができて初めて戦いに勝てるのです。皆さんは卒業研究において、沢山の文献や本を読むことによって、そのテーマの攻略方法が見つかることを勉強した事と思います。また耳にたこができるほど聞いていると思われるアセスメントについては、孫子では、漫然としたアセスメントではなく、確かなアセスメントが大事だと言っています。何が本当か、何が頼りにできる情報かを、先入観を持たず、人の考えに惑わされず、科学的根拠に照らしながら見抜くことが、彼を知ることにつながります。
今後皆さんが進む道でも、彼を知り、己を知れば百戦あやうからずを地で行って下さい。特に、周りの目を気にせず、己を知る事すなわち自分を知って大切にする事を常に心掛けてください。
最近大学は、地域との距離を縮めることが重視され、地域に開き、地域に貢献しながら地域でも学ぶことが勧められています。皆さんのうちの何人もがかほく市や能登半島の地で学ばせていただいたことと思います。また被災地でも学ばせていただきました。一人ひとりにとって貴重な宝となることと思います。開学時から、本学は地域とともにある大学である事をモットーとしてまいりましたが、今後は一層それが盛んになると思われます。後輩たちは皆さんの後を追って地域で学ばせていただくでしょう。皆さんは卒業しても在学生との縦のつながりを保ち、キャンパスライフや学びに戸惑っている後輩がいたら導いてあげていただきたいと思います。
博士前期課程の修了生の皆さんはこれからすぐに教育研究者、高度実践看護者、看護管理者として対外的にも重要な立場に就くと思います。学位論文の作成で身に着けたさまざまな力を発揮するとともに、暑い夏の国際看護での学びを思い出し、世界へも進出して下さい。
皆さんは、このかほくという土地の空気を吸い、雪を踏みしめ、風を感じながら勉強しました。この地、この大学をいつまでも忘れないように、そしてここは喜びや悩みを分かち合える場所と思って心に刻んでおいてください。
キャンパスもすっかり春めき、皆様の門出に合わせて喜びを表しています。皆さんとの思い出は尽きませんが、潔く送り出さねばなりません。
ここにお集まりの皆様とともに卒業生、修了生の前途を祝して式辞といたします。
学長 石垣 和子