過去のメッセージ・コラム
平成26年度入学式式辞(2014年4月4日)
2014年4月4日
本日、春の気配に覆われた、この里山海道の地に建つ石川県立看護大学にご参集の、看護学部入学生82名、3年次編入生10名、看護学研究科博士前期課程学生10名、後期課程4名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。
またこの日を心待ちにされておられたご家族の皆様にも心よりお祝い申し上げます。教職員一同皆様のご入学を心より歓迎いたします。また、本日は谷本正憲石川県知事を始め、多くのご来賓の方々のご列席を賜り感謝申し上げます。
本学は2000年に発足し、今年で15年目を迎えます。卒業生たちは石川県立看護大学での学びを実践者としてあるいは教育者としてしっかりと発揮しています。皆さんがこれから勉強に出かける病院でもきっと笑顔で皆さんを出迎えることと思います。 皆さんは、ここに並んだご来賓の皆様、ご家族、教職員一同ばかりでなく、先輩たち、市民の方々からも見守られ、期待されていることを忘れず、今の思いを素直に成長に繋げていただきたいと思います。
日本では医療の高度化が進み、また人々のライフスタイルの多様化に伴う看護職の高度な実践力や研究能力に対して、期待が高まっております。同時に看護師の量の増大の必要性もますます高まり、それらに応えるべく看護系の大学も多数が設立されてきました。 また専門性の高い看護職にも注目が集まり、大学院での専門看護師教育が盛んです。 本学も開学4年後には看護学研究科を備えて看護研究者の育成や4つの領域の専門看護師教育を行ってまいりました。昨年には看護キャリア支援センターを立ち上げ、認定看護師をはじめとした大小さまざまな看護職のキャリア発展にも微力を尽くしたいと考えています。
本日入学される大学院博士前期課程、後期課程の皆様におかれましては、この看護学研究科でしっかりと学び、研究能力や高度の看護実践力を身につけて、皆様の計画しておられるキャリア発展に役立てるとともに、社会の期待に応えていただきたいと思います。
さて、これまで皆さんは知識を蓄えることや、正解があるという前提のもとで問題を解くことを第1にしてきませんでしたか? 大学という場所では・・・、そして看護という仕事につくには、与えられるのを座して待つだけでは足りません。積極的な姿勢のもとで、自ら何かを学び取ることを行うことが重要なのです。優等生だからできるとは限りません。劣等生だから出来ないとも限りません。皆さんは今ここにいい看護職になるためのスタートラインに等しくついたのです。 カリキュラムがとてもタイトであることは覚悟していただく必要がありますが、それだけでなく大学という場で手に入るさまざまな機会を捉えて人を知り社会を知り、想像力を身に付け、人間としての知恵を身に付けて下さい。 それが翻ってカリキュラムを通じての学びの楽しさにも結びつきます。そして与えられた正解を本当?と疑うようになってもらいたいと思います。 たくさんある看護系大学の中で本学が目立っているのは看護系以外の教員の割合が高いことです。今述べたような人を知り社会を知り、人とコミュニケーションをとることは看護職として不可欠なことです。また看護の知識技術の基礎となる健康科学の知識も十分におさめる必要があります。それらにとっては、この体制を取ることがたいへん意味があると考えています。
さて、日本社会は団塊の世代が75歳を迎える2025年を前にしています。要介護者が急増すると考えられるこのときまでに、生活圏の身近な距離に医療、看護、介護が配置されるように基盤を整えることや地域住民間の見守りや助け合いを育てることがすすめられています。
この点、この大学は地域社会から実例を学ぶ好立地にあります。大学のすぐ近くの地域に目を向けると、あちこちに昔からの見守りや助け合いがあることに気づきます。本学は地元かほく市と協定を結び、ご来賓の油野かほく市長さんを先頭に、「かほく市を舞台とした実社会からの」学生の生きた学習機会の提供をいただいています。 また、学生が大学の外で学ぶことは、地元住民の若者との接触機会の提供となり、喜ばれるという効果も生んでいます。 さらにより北の奥能登に至る地域に出かけて学ぶプログラムも用意されています。高齢化先進地ともいえるそのような地域では、身の回りにある地域の歴史や文化に逆らわない自然な考え方や助け合いが存在しており、日本が準備しようとしているシステムの参考になることがたくさん潜んでいます。 皆さんがその場に身をおいて考え感じることは、将来どのような道に進もうとも役に立つ勉強が出来る機会でもあると考えております。大学院生の皆様にとっても日本全体を俯瞰する勉強ができる機会、また社会に即役立つ研究の機会にもなると考えております。
皆さん、このように大学というところは教室で学ぶばかりではありません。一人ひとりの個性に合わせて積極的にやっていただきたいことがたくさんあります。
友達・他大学の学生・大人・教職員と世の中について意見を交換してみることや、音楽や文化的な体験をすること、インターナショナルな挑戦をしてみること、今述べた地域社会の生活に触れること、地域の行事に参加することなど、いろいろあります。 これらは決して寄り道ではなく、皆様にとって本道であると考えて下さい。大学院入学の皆さんも同じキャンパスで学ぶ立場で一緒になってさまざまな体験をしてください。異世代の交流は双方にとってとても大切なことです。
ところで皆さんはなぜ看護職や看護研究者を目指すのかと問われたらなんと応えますか?「なぜ貴方はエヴェレストを目指すのか」と問われ、「そこに山があるから」と応えたのはイギリスの登山家ジョージ・マロリーです。皆さんも自分なりの答えを考えてみて下さい。今後迷いが生じたときにきっと助けになると思います。
これから皆さんは看護師・保健師を目指し、専門看護師や教員を目指してスタートを切ります。この自然豊かなキャンパスに皆様の元気な声が響き、それがあたり一面、そして遠くまで広がってゆくことを楽しみにしております。
最後に、ご臨席下さった皆様方に、学生達本学への引き続きのご支援やご協力をお願いして式辞とさせていただきます。
本日は誠におめでとうございます。
学長 石垣 和子