専門看護師(CNS)教育課程
老人看護 専門看護師教育課程(38単位)
1. 大学院における老人看護
わが国の人口構造の急激な高齢化は、老年看護に関するニーズの多様性と高度な専門的看護の必要性が求められています。人生のライフサイクルのなかで、「生老病死」の「生」を除く「老い」「病い」「死」への保健・医療・福祉を包含した質の高いケアの提供は病院、施設、地域を問わず喫緊の課題になっております。
現在(2016年)、北陸3県で大学院教育における老人看護専門看護師教育課程をもっているのは本大学院のみです。高齢者化率の高い北陸で、老年看護の質を高めるためにも、今後、多くの看護師が看護の質向上を目指して専門看護師にチャレンジしてくださることを期待しています。
2. カリキュラムの概要について
歴史的・社会的存在としての高齢者を深く理解し、老化過程や生活の営みに関連する複雑な健康問題に対して高度な専門的知識・技術を駆使し、高齢者のセルフケア能力の開発に貢献するケア方法を探究していきます。さらに、高齢者と家族が有する多様なニーズ、課題に創造的・先駆的な取り組みができる実践・研究能力を育成することを目指しています。
そのため、以下の科目を履修していただきます。
老年看護学分野の開講科目
- 老年看護特論
- 老化過程と病態論
- 高齢者健康生活論
- 高齢者援助論
- 高齢者ケアシステム論
- 老年看護演習Ⅰ(慢性期看護)
- 老年看護演習Ⅱ(認知症看護)
- 老年看護実習1(慢性期看護)
- 老年看護実習2(認知症看護)
共通の開講科目
- 看護科学と看護理論
- 看護研究
- 臨床薬理学
- アドバンストフィジカルアセスメント
- 病態生理学
- 特別研究(修士論文) 等
専門看護師教育課程において「老年看護実習」は、高齢者の尊厳・倫理間を基盤に卓越した実践能力とケア開発能力を修得するために、県内・外の病院、施設等で主体的な実習を行います。実習現場では老人看護の専門看護師やその領域のスペシャリストから直接学ぶことができます。主な実習施設は金沢医科大学病院、公立能登総合病院などです。
3. 石川県における老人看護専門看護師(老人CNS)からのメッセージ
直井千津子さん(平成19年11月取得)金沢医科大学看護学部
私は、平成16年から18年にかけ石川県立看護大学大学院の老年看護学講座で老人看護専門看護師の教育課程を修了し、現在、金沢医科大学病院で病棟師長として勤務しています。急性期医療の現場においては、疾患を有する認知症高齢者への対応や摂食・嚥下障害、排泄障害などの健康問題、要介護状態高齢者の退院調整、終末期高齢者の医療の選択や看取りの場の選択、家族支援など、高齢者を取り巻く課題は複雑、多岐にわたり、老人看護CNSの活動が求められています。また、一施設内だけで解決できない課題が多く、施設間や地域との情報交換や話し合いもCNSの果たす役割だと感じています。何らかの健康課題を有する高齢者が、その人らしい人生を送ることを目標に、老人看護CNSとして活動する人が増えてくることが高齢者ケアの質の向上につながると信じています。
高道香織さん(平成20年11月取得)国立病院機構医王病院
2008年11月、老人看護CNSに認定されました。老人看護CNSの人数はまだ少なく、私は全国で14番目の老人看護CNSです。社会の高齢化に伴って、病棟で出会う患者の多くは高齢者という現状があります。高齢者といっても、一般的に高齢者と言われる65歳の年齢を迎えた方から、時には100歳を超える長寿の方まで様々です。私が老人看護を選んだのは、高齢者それぞれの方に独自の心身の特徴や発達段階・人生の歩みがあり、個別的な看護の提供や看護展開が必要だと思ったからです。
昨年度4月より、病棟から地域医療連携室に配属となり、退院支援を中心にして組織横断的に活動し、複雑で解決困難な事例に関わっています。ご本人やご家族が個々に持つ強み・潜在している力を見出し、引き出せるよう関わることで、対象の方々の心身・状況に良い変化が起こり、回復過程を導く看護の奥深さと醍醐味を実感する日々が続いています。
老人看護に関心を持っているナースは、是非老人看護CNSの道を拓く、石川県立看護大学大学院の老人看護CNSコースに進んでいただきたいと思います。
閨利志子さん(平成21年11月取得)公立能登総合病院
私は、平成19年に石川県立看護大学大学院の老年看護学講座で老人看護専門看護師教育課程を修了し、現在、公立能登総合病院で主任看護師として勤務しています。対象の多くは高齢で慢性疾患を持つ患者です。高齢者を取り巻く課題には、二次的合併症の発症による入院の長期化や高齢者の独居、二人暮しなど家族形態の変化、そして老老介護といった介護者の高齢化、高齢者の看取りのあり方や解決困難な事例への退院調整など多様化しています。こうした課題と向き合いながら、高齢者や家族の意思を尊重し、その人らしい生き方を支援していくことや、多職種と連携しながら組織的に関わり、地域・行政にケアをつないでいくことが老人看護CNSの役割だと考えています。
「CNSに相談してみよう...」とスタッフから意図的にCNSが活用され、ケアの中に組み込まれていけるよう、「全体を見渡す目」や「先を見通す力」を持ち、時代の変化や新しい情報に対応できるよう学ぶ姿勢を持ち続けたいと思っています。