過去のメッセージ・コラム
平成24年度入学式式辞(2012年4月6日)
春の訪れがそこここに感じられる季節となりました。
本日はここに 看護学部83名、3年次編入生7名、大学院博士前期課程11名、博士後期課程2名の新入生を迎えました。教職員一同大変嬉しく思うと同時に、皆様におめでとうと申し上げます。また、ご家族、関係者の皆様にも心からお祝申し上げます。ご来賓の皆様におかれましては、お忙しいところご臨席賜りまして誠にありがたく存じております。
新入生のみなさん、これからの皆さんの前には前途洋洋の未来が開けています。未来に向けてこれからこの新しい土地で、新しい勉強、新しい経験、そして新しい友人、教職員との交わりが始まります。4年間、あるいは2年間、3年間とそれぞれ期間は異なりますが、それぞれ悔いなく過ごせるよう教職員一同精一杯支援いたします。
さて、日本中に想定外、想定内という言葉が飛び交った東日本大震災から1年がたち、近いと言われる南海トラフ大地震の震度や津波の高さ想定が発表されました。今、地球という惑星に起こる人の力ではコントロール不能な地殻変動に対する、人間の知の挑戦が必死で行われています。もし、遠いところから時間を超越して地球を見ている者がいたとしたら、宇宙規模のスケールでは無視されるほどの出来事への挑戦、そんな論評もしたくなるような些細な、だけれども人間にとって強大な現象に対する挑戦です。
一方で、実際に災害が発生した時、一瞬の恐怖がいかに尾を引き、失った悲しみがいかに繰り返し蘇るものであるか、日本は身をもって体験中です。高々100年、平均80年という宇宙的には一瞬に過ぎない人の一生ではありますが、その一瞬が人にとってのすべてであり、刹那といえどもとてもその人にとっては長く感じられるものであり、ましてや刹那のつながりはその人にとって永遠と同じといえるわけです。
大災害に限らず病気やけがは随時人を襲います。1秒1秒がハッピーかハッピーでないか、目の前が真っ暗か光明が見えているか、一大事です。偉大な先駆者などでもない限り、ひとは100年後には忘れ去られる運命ではありますが、一人ひとりは懸命に与えられた生を貫こうとしている存在であります。そういう人たちに寄り添い、不安を除き、叶うだけの安楽を提供し、生死のプロセスを支援するのが我々看護の仕事です。
南海トラフ地震への備えのように巨大な相手に対してあきらめずに知を結集して挑戦し続けるのが人間です。それと同様に、看護においても、挑戦すべき巨大な相手があります。それは、複雑系といわれる人間です。同じ刺激を入れても同じ反応は示しません。生物体としての人間を知ることも必要ですが、看護職として突き当るのは、経験も考え方も違う一人ひとりとどのように付き合うかということです。複雑系はほとんど解明されていません。看護人としては、まずは一生懸命看護を実践すること、そのような実践を研究することが大切ですが、その方法論はこれから発展してくることが期待されています。それを発展させるのは皆さんです。看護の知がたくさん集積できるかどうかは皆さんの肩にかかっています。
ところで、たくさんある大学の中で本学の特徴は、看護の教員はもちろんのこと、ほかに人間科学、健康科学の教員が充実していることです。看護を実践し、その知を見つけるのにとても大事な分野です。ここで学ぶ皆さんにはこれらの知識や考え方が看護と融合しながら降り注ぎます。その結果、きっと皆さんは、看護を飛躍的に発展させてゆく人材に育っていただけると信じております。
看護学科に入学された皆さんはこれからこのような看護の仕事を一から学び、看護師・保健師の2つの資格を目指します。3年次に編入された皆さんはこれまでの看護師の学びをおさらいし、新たに保健師の仕事を学びます。両者とも早く馴染んで専門の教員からより深い話が聞けるように自分から積極的に向かっていってください。大学では、誰かに勝つことではなく、自分を高めることや自分を知ることに努めることが大事です。正規の授業以外の活動も含めてすべてのキャンパスライフがそれにかかっていると思ってください。
看護学研究科に入学された皆さんは、これまでの看護実践を踏まえてより熟練した実践者となることや看護学の研究者となることを学びます。まずは指導教員とよく知りあい、向かう方向を定めてから深まりと広がりのある勉強をしていただきたいと思います。
最後になりましたが、本大学は1年前から石川県公立大学法人となって運営されています。谷本石川県知事、法人の理事長、監事のご臨席を賜り、後ろ盾が大きくなって心強い思いです。
本日は肌寒い日となりましたが、心の中には嬉しい暖かい気持ちが流れています。皆さんの未来を期待し、教職員一同皆さんとともに歩むことを誓って式辞といたします。
学長 石垣 和子
2012年4月6日