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平成27年度入学式式辞(2015年4月3日)

2015年4月3日

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

本日の皆さんの晴れやかなお顔を拝見し、首を長くして皆さんを待っていた教職員一同と共にとても嬉しく感じ、皆様のご入学を心より歓迎いたします。

ここまでの道のりはそれぞれ大変な努力やご苦労があったのではないかと思いますが、それを乗り越えて今日の日を迎えた喜びを、一同、共有させていただきたいと思います。この日を心待ちにされておられたご家族の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

また、本日は谷本正憲石川県知事を始め、多くのご来賓の方々のご列席を賜っております。晴れのこの日にご列席賜り、あらためて感謝申し上げます。

 季節は春を迎え、桜のつぼみも急に色づいてまいりました。この「かほく」という地は自然に恵まれ、人々が優しい土地柄です。皆さんはこれからこの地を拠点にして勉強をしてゆきます。

 さて、昨今、保健医療福祉をめぐる社会情勢は大変な様変わりを遂げよとしています。その背景には高齢社会があることは多くの皆さんがご存知でしょう。日本は、世界で最も高齢先進国であるわが国、でなくては成し遂げられない、前人未到の領域に踏み込もうとしています。看護職の働く場、そしてもしかすると看護職の役割にも影響が及ぶことも考えておかねばなりません。皆さんは、入学後はこれらのこともじっくり学びます。

 本日入学する皆さんには、新しい感性でイノベーションを起こし、保健医療福祉に新たな改革をもたらし、これからの日本をそして世界をリードしていただきたいものだと期待しています。

 本日ここには、これから看護師や保健師になるための勉強を84名と、3年次に編入する6名、すでに看護経験を重ねた後に看護教育研究者、看護管理者、高度な看護実践者を目指す大学院生10名が集まっています。申し上げた期待は、それぞれに大きくかかっています。過渡期の日本にあって、皆さんは大変重要な時期に学ぶことになります。

 そこで大切なことは、それぞれがきちんと学ぶだけの心構えを今一度立て直すことと、それを可能にするだけの基礎力をたゆまず点検し、自ら必要な補充をすることです。看護の勉強には皆さんが思っている以上にたくさんの基礎的な知識が必要です。学際的という表現がありますが、看護学はまさに学際的に幅の広い分野と関係している学問です。社会一般では、看護は理系の学問だと思われているかもしれませんが、それも必要だけれど、文系の見方、考え方もそれと同等に必要です。

学びを順調に進めるには、理系・文系を問わず不足する基礎力を自発的に補う努力が必要です。

 入学試験に合格した皆さんは潜在的な力をお持ちです。しかし、気を暖めてしまうと潜在的な力を萎えさせ、磨かぬうちに退化させてしまいます。ですから、個々人で点検する必要性があるのです。入学したことに満足せず、「これからが肝心」と今一度肝に銘じて、入学した目的を忘れずに、一層意識を高く持っていただきたいと思います。その上で、勉強に向き合ってください。

 勉強にもいろいろな仕方があり、決して机に向かうことだけが勉強ではありませんが、学生には、そして皆さんのようにモチベーションの高まっているときには、一人で調べたり、一人で書いたり、一人で考えたりという空間と時間を確保することが、飛躍的に自分を高めることにつながります。今をおいてはそのような機会はないと思ってこれからの時間を大切に使ってください。

 先に申し上げたように、保健医療福祉システムというものは社会情勢によって姿を変える生き物です。社会的・経済的情勢と密接に関連しながら姿形を整えています。目先の範囲では捉え切れない、その姿をとるべき必然性が隠れているのです。そこで、皆さんには、大きな視野で世の中を捉えることのできる人材になっていただきたいと思います。

 そのためにはひとつには世界を知っていただきたいと思います。異文化下にある人々と積極的に交わり、その社会の成り立ちを知り、翻って日本を見つめなおすことが、新たな発見や着想につながります。本学では海外と関わる複数のプログラムを学部教育にも大学院教育にも用意し、皆さんの積極的な参加を待っています。これらを通じてカルチャーショックを大いに味わい、俯瞰的な見方ができるようになっていただきたいと思います。

 社会情勢を知るには、具体例を掘り下げることも大切なことです。幸い、本学は地元かほく市と協定を結び、ご来賓の油野かほく市長さんのリーダーシップのもと、かほく市を舞台とした実社会からの学生の生きた学習機会の提供をいただいています。ほかに、津幡町や宝達志水町等、さらに北の奥能登に至る地域に出かけて学ぶプログラムも用意されています。皆さんがそのような場に身をおいて、そこで暮らす人々と接して考え感じることは、皆さんに知的な刺激を与え、地域の歴史や文化とセットで社会情勢を理解する力を与えてくれます。大学院の皆様にとっても日本全体を俯瞰する勉強ができる機会、また社会に即役立つ研究の機会にもなると考えております。

学部生に対しては、他の大学ではまだ取り入れていないボランティア活動や地域に出ての積極的な学びなどを、正規の単位に位置づけるカリキュラムも創設しています。

 本学は規模の小さな大学ですが、その分、学生と教員の距離が近く、時として家族のような雰囲気も漂っています。これは、看護基礎教育、大学院教育両方に言えることです。先生方は、おそらく皆さんが想像するよりずっと皆さんとの交流を望んでおり、気軽に何でも話に乗ってくれます。皆さんには精一杯それを活用していただき、先生方から貪欲に吸収していただきたいと思います。

 本学はいまだ15年の歴史です。これと誇れる伝統は鋭意形成中ですが、その分、本日入学された皆さんの足跡が重要な意味を持ちます。教職員一同、皆さんがこの大学で当初の目的を成就されますよう、支援してまいりたいと思います。

 最後に、道元の「松も時なり、竹も時なり」という言葉を紹介します。松は松なりの時を生きる、竹は竹なりの時を生きるという意味だそうですが、皆さんもそうです。人はそれぞれ自分なりの時間を生きるのです。本学での時間を一人ひとりがどのように生きるのか、それを決めるのは誰でもない、「自分」なのです。

 今後の皆さんの健闘を祈って式辞といたします。

学長 石垣 和子

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